先日、オンライン整数列大辞典に載ってない(載せた)定理を証明した記事を書きました。
corollary2525.hatenablog.com
2022年6月13日の学びカテゴリーの人気エントリートップ10くらいになるほど多くの人に読まれているようです。ありがとうございます!
b.hatena.ne.jp
記事の公開後、よくよく振り返ったらもっと簡単に証明できる所がありましたので、補足として書いておきます。
補題2と定理1(3)の復習
まず、7以上の自然数は相異なる素数の和で表せることを示す補題を復習します。
この補題により、自然数を
の相異なる素数の和で表したければ、
を示せば十分です。
また、自然数を
の相異なる素数の和で表したければ、
を示せば十分です。
これを踏まえて定理1(3)の証明を振り返りましょう。
のとき,
.すなわち
,
.
かつ
が奇数のとき,
.
のとき,
.
が
,
,
以外の偶数のとき,
.
(3)の証明
とおく(
かつ
).このうち,
をみたすのは
である.このときそれぞれ
であるが
\begin{alignat*}{2}
3 &= &2& + 3 + 5 - 7\\
8 &= &2& - 3 + 5 - 7 + 11\\
15 &= &2& + 3 + 5 + 7 + 11 - 13
\end{alignat*}と表せるので,が確認できる.以後
(よって
)とする.
は相異なる素数の和で表せないので
.また,
\begin{align}
n &= \sum_{i=1}^{k+1} p_i - (2l+p_{k+1})\notag\\
&= \sum_{i=1}^{k+2} p_i - (2l+p_{k+1}+p_{k+2}) \tag{eq2}\label{eq2}
\end{align}という表示ができるが,は奇数なので
.一方
は偶数なので
とおくとBertrandの仮説より
\begin{align*}
m - p_{k+1} &= l+\frac{1}{2}(p_{k+2} - p_{k+1})\\
& \le 6+\frac{1}{2}(2p_{k+1} - p_{k+1})\\
& = 6+\frac{p_{k+1}}{2}\\
& \le \color{red}{p_{k+1}}.\\
\end{align*}のとき,補題2より
は
の相異なる素数の和で表せる.よって
は
の相異なる素数の和で表せるので\eqref{eq2}と合わせて
が得られる.
のとき,すなわち
\begin{align*}
(l, p_{k+2}-p_{k+1}) =& (1, 2),\,(1, 4),\,(1, 6),\,(1, 8),\,(1, 10),\\
&(4, 2),\,(4, 4)
\end{align*}
\begin{align*}
m &= l+\frac{1}{2}(p_{k+1}+p_{k+2})\\
&= 1+\frac{1}{2}(p_{k+2}-2t+p_{k+2})\\
&= p_{k+2}-t+1\\
&\le \color{red}{p_{k+2}}.
\end{align*}また,
(
)のときは
\begin{align*}
m &= 4+\frac{1}{2}(p_{k+2}-2t+p_{k+2})\\
&= p_{k+2}-t+4.
\end{align*}よってまたは
となるが,いずれも相異なる素数の和になっているので
\[
n = 2 - 3 + \cdots + p_{k+1} - p_{k+2}
\]または
\[
n = - 2 + 3 + \cdots + p_{k+1} - p_{k+2}
\]と表せる.ゆえに.
より簡潔な証明
あえてで考えて不等式評価したり、
とか
とかで抑えようとしたりして、工夫して計算した形跡が垣間見えます。
ですが、あくまで(3)の証明の目標は「を
の相異なる素数の和で表すこと」です。
なので、を示せばいいんです。場合分けしたりBertrandの仮説を使ったりしてますが、
\begin{align*}
m&=l+\frac{1}{2}(p_{k+1}+p_{k+2})\\
&< 6+\frac{1}{2}(p_{k+2}+p_{k+2})\\
&= 6+p_{k+2}\\
&< 6+p_{k+3}
\end{align*}でよくない?よくなくなくなくなくない?
いや、最初はこんな感じで証明してたんです。久しぶりに読み返したら「ん?でしょ?
の可能性があるからだめじゃね?」と勘違いしてしまったんです。確かに
ですが、
は7から数えたときの個数だからちょっとズレてんのよ。
しかもで抑えられたので、
は
の相異なる素数の和で表せます。よって
(
の符号はプラスのままでよい)ことが分かります。こっちの方がええやん。
おまけ(ボツ命題)
ついでに、証明に使えないことに気づいてボツになった命題を供養します。
\[
p_{k+3}-\frac{1}{2}(p_{k+1}+p_k)\ge7.
\]
のときと
のときを考えればよい.
のときは
なので
.よって
\begin{align*}
p_{k+3}-\frac{1}{2}(p_{k+1}+p_k)&\ge p_{k+2}+2-(p_k + 1)\\
&\ge 7.
\end{align*}のときは
\begin{align*}
p_{k+3}-\frac{1}{2}(p_{k+1}+p_k)&\ge p_{k+3}-\frac{1}{2}(p_{k+1}+p_{k+1}-4)\\
&\ge p_{k+3}-p_{k+1}+2\\
&\ge 8
\end{align*}となる.■
余談ですが、この命題の等号成立はかつ
なので
が4つ子素数のときになります。考えてみれば、
と
の差と
をなるべく小さくすればいいので、4つ子素数が出てくるのも納得です。
勘違い証明
この命題を用いて、定理1(3)に出てくるをこんな風に計算しました:
\begin{align*}
m&=l+\frac{1}{2}(p_{k+1}+p_{k+2})\\
&\le 6+p_{\color{blue}{k+3}}-7\\
&< 6+p_{k+3}.
\end{align*}キター!…と思いましたが、この証明には重大なミスがあります。
そのミスとは…
添え字、1ずれてんじゃん。じゃん。
これじゃで抑えられないじゃん。
という裏話がありましたとさ。
今日は短いですが、これにておしまい!
thank Q for rEaDing.φ(・▽・ )