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Corollaryは必然に。

数学ブログを開設して10カ月。まだ7記事。全部オススメ!

26 ~平方数と立方数の間~

一カ月くらい前ですが、26歳になりました。わーい。「26歳」といえば最近知ったこのツイートを思い出します。

平方数と立方数にぴったり挟まれる数って26だけなのか!この26に秘めた性質も、エピソードも面白い!

ちなみに、大学院卒の人にとって26歳は社会人2年目の方が多いと思うんですよね。後輩が初めてできるんですよね。先輩と後輩に初めて挟まれるんですよね。どうでもいい?あっそう。

まあ、26歳になったんだし、この事実の証明くらい知っておいてもいいだろうと思い、勉強しました。そしたらまあ、証明も面白かったです。久しぶりの代数だったんで少し難しかったですけど。内容は大学レベルですが、かなり噛み砕いて説明してみたので、もしかしたら、高校生2年生くらいでもなんとな〜く分かるかも。



方程式の導出と軽い考察

まずは「平方数と立方数に挟まれる数は26だけである」を数式を織り交ぜて表現します。これは次のようになりますね。

 nを正の整数とする.このとき,ある正の整数 x y
\begin{align}
x^2=n-1\tag{a}\label{a}\\
y^3=n+1\tag{b}\label{b}
\end{align}と表せるならば, n=26だけである(このとき x=5 y=3).

ここで、\eqref{a},\eqref{b}から nを消去できます。よって証明すべきことは次の定理です。

定理
 x yを正の整数とする.このとき,
\begin{equation}\label{26}
y^3-x^2=2
\end{equation}には唯一の解があり,それは x=5 y=3である.

 x=5 y=3が\eqref{26}の解であることは明らかですが、唯一であることの証明が難しそうです。まず、整数問題を解くときはとりあえず x yの偶奇を判定しておいた方がよさそうです。

 (x, y)は\eqref{26}の解であるとき, x yは共に奇数である.

証明
奇数は何乗しても奇数であり,偶数は何乗しても偶数である. (x, y)=(偶, 奇) (x, y)=(奇, 偶)のときは y^3-x^2は奇数になってしまい,2にならない.共に偶数の場合, y^3-x^2は4の倍数になってしまうのでやはり2にならない.したがって, x yは共に奇数である.■


次に、整数問題を解くときによく使うものといえば因数分解ですね。この定理の証明も因数分解をするのですが、因数分解をする数の範囲が独特です。なんと、整数 \mathbb{Z} \sqrt{-2}を添加した環\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]上で因数分解します!



\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]について

\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]に馴染みのない人も読んでいるかもしれないので簡単に説明します。ある程度馴染んでいる人は飛ばしても構いません。

複素数というのは,実数 a bを用いて
\begin{equation*}
a+b\sqrt{-1}
\end{equation*}と表せる数のことでした*1

それと同じ感じで,整数 a bを用いて
\begin{equation*}
a+b\sqrt{-2}
\end{equation*}と表せる数を考えます。このような数全体の集合を\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]と書きます。つまり
\begin{equation*}
\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]\overset{def.}{=}\{a+b\sqrt{-2} \mid a, b\in\mathbb{Z}\}.
\end{equation*}整数 \mathbb{Z}に和,差,積を考えられるのと同様に, \mathbb{Z}[\sqrt{-2}]にも和,差,そして積がちゃんと定義されています。
\begin{align*}
(a+b\sqrt{-2})\pm(c+d\sqrt{-2}) &= (a\pm c)+(b\pm d)\sqrt{-2},\\
(a+b\sqrt{-2})(c+d\sqrt{-2}) &= (ac-2bd)+(ad+bc)\sqrt{-2}.\\
\end{align*}除法はできるとは限りませんが, \mathbb{Z}[\sqrt{-2}]にも「割り切れる」「互いに素」などの概念はあります。

定義

  •  \alpha,\; \beta\in\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]とする.このとき,ある数 \delta\in\mathbb{Z}[\sqrt{-2}] \alpha = \delta\betaと表せるとき, \alpha \beta割り切れるという.
  •  \alpha,\; \beta\in\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]とする.このとき,どちらも \delta\in\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]で割り切れるとき, \delta公約数という.特に公約数が \delta=\pm1しかないとき*2 \alpha \beta互いに素であるという.


そして\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]には次の重要な性質があります。

定理
\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]は一意分解環である.

一意分解環の定義は一意分解環 - Wikipediaに載っています。
例えば,整数の範囲で12は
\begin{equation*}
12=2^2\cdot3
\end{equation*}と一通りの素因数分解ができます。\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]にも素数に相当する素元というものがあって,この範囲で12を分解すると
\begin{equation*}
12=(\sqrt{-2})^4(1+\sqrt{-2})(1-\sqrt{-2})
\end{equation*}と一意的に分解ができます。このように、数の世界を変えると素数だと思っていた数が素数でなくなることがあります。


注意: 厳密には,単元とその元以外で割り切れない元を既約元といい,素元 pの定義は, ab pで割り切れるならば, aまたは b pで割り切れることです。一般に,既約元と素元は違うものですが,一意分解環であればそれらは同値なので,少なくともこの記事内では気にする必要はありません。

ちなみに,一意分解環でない例としては\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]があります。この環において6を考えると
\begin{equation*}
6=2\cdot 3=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})
\end{equation*}と2通りに分解されてしまいます。

今回は,\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]が一意分解環であることを認めて証明していきます。



証明の概略

証明の流れをつかみやすくするため、二カ所だけ証明を後回しにしました。

証明
 y^3 - x^2 = 2を式変形して
\begin{equation*}
y^3 = (x+\sqrt{-2})(x-\sqrt{-2})
\end{equation*}となる.
ここで, (x+\sqrt{-2}) (x-\sqrt{-2})\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]上で互いに素(要証明)で,\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]は一意分解環であるから,ある整数 a,  b
\begin{equation}\label{3}
x+\sqrt{-2} = (a+b\sqrt{-2})^3
\end{equation}と表せる(要証明)

\eqref{3}を展開して,\sqrt{-2}の部分に注目すると 3a^2b - 2b^3 = 1となる.あとは標準的な整数問題.

 b(3a^2 - 2b^2) = 1より b=3a^2 - 2b^2=\pm1が分かるが, b=-1のときは 3a^2 - 2(-1)^2 = 3a^2-2>0となり不適.よって, b=1 a=\pm1である.

\eqref{3}より
\begin{align*}
x+\sqrt{-2} &= (\pm1+\sqrt{-2})^3\\
&= \pm5+\sqrt{-2}.
\end{align*} x>0なので x=5.これを\eqref{26}に代入してy=3が得られる.■


要証明の部分を除けば意外と簡単に証明できました。わーい。



要証明の部分について

証明を後回しにした部分の証明です。ここがちょっと難しいかも。

 (x+\sqrt{-2}) (x-\sqrt{-2}) \mathbb{Z}[\sqrt{-2}]で互いに素である.

証明
 (x+\sqrt{-2}) (x-\sqrt{-2})は共に \delta\in\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]で割り切れるとする.和と差を考えれば, 2x 2\sqrt{-2} \deltaで割り切れる.ここで,補題1より xは奇数だったので, x \sqrt{-2}は互いに素.実際, xが奇数だと\begin{equation*}
x=(a+b\sqrt{-2})\sqrt{-2}=-2b+a\sqrt{-2}
\end{equation*}を満たす整数 a bは無い.
よって2は \deltaで割り切れる.つまり \delta=\pm1,\; \pm2,\; \pm\sqrt{-2}のどれかである. \delta=\pm2,\; \pm\sqrt{-2}のときは (x+\sqrt{-2})(x-\sqrt{-2})=y^3が偶数なので, yは偶数となる.これは補題1と矛盾する.
したがって, \delta=\pm1であり, (x+\sqrt{-2}) (x-\sqrt{-2})は互いに素である.■


 (x+\sqrt{-2})(x-\sqrt{-2})=y^3のとき,ある整数 a,  b
\begin{equation*}
x+\sqrt{-2} = (a+b\sqrt{-2})^3
\end{equation*}と表せる.

証明
まず,\mathbb{Z}[\sqrt{-2}]は一意分解環であるから
\begin{align*}
x+\sqrt{-2} &= \alpha_1\alpha_2\alpha_3\cdots\alpha_n\\
x-\sqrt{-2} &= \overline{\alpha_1}\:\overline{\alpha_2}\:\overline{\alpha_3}\cdots\overline{\alpha_n}\\
y^3 &= \beta_1^3\beta_2^3\beta_3^3\cdots\beta_m^3
\end{align*}と素元分解ができる( \overline{\alpha} \alpha共役を表す).ここで, (x+\sqrt{-2}) (x-\sqrt{-2})は互いに素なので,任意の i, j \alpha_i\neq\overline{\alpha_j}.さらに,
\begin{equation*}
(x+\sqrt{-2})(x-\sqrt{-2})=y^3
\end{equation*}だったので,つまり y^3の因数である各 \beta_j (x+\sqrt{-2})の因数に3個,あるいは (x-\sqrt{-2})の因数に3個ずつ現れる.結局 (x+\sqrt{-2}) (x-\sqrt{-2})はどちらも立方数となり, (x+\sqrt{-2})の方に注目すれば
\begin{equation*}
x+\sqrt{-2} = (a+b\sqrt{-2})^3\qquad(a, b\in\mathbb{Z})
\end{equation*}と表せる.■



あとがき

ちなみに、僕が調べた中で一番古い参考書はこちらでした。

初等整数論講義 第2版

初等整数論講義 第2版

この305ページの[問題1]が今回扱った問題なのですが、ここでは2次体
\begin{equation*}
\mathbb{Q}(\sqrt{-2}):=\{x+y\sqrt{-2}\mid x, y\in\mathbb{Q}\}
\end{equation*}におけるイデアルの類数が1であることを用いて証明しているようです。イデアルとかの議論は詳しく勉強してないのでよく分からなかったですが。代数にも強くなりたい。

ここまで読んでくれた皆様ならお気づきだと思いますが、定理の主張や証明では、
\begin{equation*}
\daggerもう1人の僕\dagger
\end{equation*}が覚醒して「だ・である調」になってしまいますね。というより「です・ます調」の証明がしっくりこなかったです。


気づいたら20代後半。若者とおっさんの間を生きてます。

thank Q for rEaDing.φ(・▽・ )

参考文献

*1:複素数を最初に学んだときは虚数単位を用いて i=\sqrt{-1}としていたと思いますが、2次の整数環を考えるときはルート表記が多いです。

*2:一般には,公約数が単元(逆元をもつ元)しかないときです。 \mathbb{Z}[\sqrt{-2}]の単元は \delta=\pm1だけ(気になる人は証明してみて)なのでこう表記しました。