「足してA、引いてBになる2つの数」に関するお話の前編です。今回は「運命の赤い関数」を作ります。お楽しみに!
あと、今回は一度やってみたかった「対話形式」で書いてみました。
マスマスさん:数学を学ぶ男子大学生。コロリーの家に居候している。最近、病的な関数に興味をもっている。
コロリー:数学が好きなゆるキャラ。数学をマスマスさんに教わっている。数学のあとに舐めるハチミツが生きがい。
第1章「足してA、引いてBって?」
コロリー「マスマスさんw 今日は大学行かないの?w」
マスマス「うん、大学はもう授業がないんだ。試験も終わって暇だから、病的な関数を作って遊んでいたんだ」
コロリー「え?何それw 教えて教えてw」
マスマス「ん~しょうがないな~。…じゃあね、まずはこんな問題を考えてみよっか?」
x+y=A\\
x-y=B
\end{cases}を満たす,を求めなさい.
コロリー「マスマスさんw これって連立方程式?簡単だよw」
マスマス「じゃあ解いてごらん。文字がたくさんあるけど、求めたいものは何なのかを忘れないようにね。とを求めたいから、答えは
\begin{equation}x=(AとBの式),y=(AとBの式)\end{equation}という形で答えるんだよ」
コロリー「うん、わかったw えっと、この場合、上の式と下の式を足せばが消えるね。
\begin{equation}2x=A+B\end{equation}になったから、
\begin{equation}x=\dfrac{A+B}{2}\end{equation}かな?」
マスマス「正解!」
コロリー「よぅしw 次はこれを、上の式に代入するぞお。
\begin{align*}
\dfrac{A+B}{2}+y &=A &&(x=\frac{A+B}{2}を代入した)\\
y &=A-\dfrac{A+B}{2} &&(\frac{A+B}{2}を移項した)\\
y &=\dfrac{2A-(A+B)}{2} &&(通分した)\\
y &=\dfrac{A-B}{2} &&(計算した)
\end{align*}
マスマス「うん!大正解!」
コロリー「おぅw やったーwww」
マスマス「実はね、を代入するよりも
\begin{cases}
x+y=A\\
x-y=B
\end{cases}に戻って、を計算したほうが簡単だったんだ」
コロリー「えぇ?あっ、本当だw
\begin{equation}2y=A-B\end{equation}になるから、
\begin{equation}y=\dfrac{A-B}{2}\end{equation}となった!」
マスマス「そうそう。いつでも『どうすればラクして計算できるかな?』という気持ちを忘れずにね。それはともかく、今の計算で次のことが分かったね」
\dfrac{A+B}{2}+\dfrac{A-B}{2}=A\\
\dfrac{A+B}{2}-\dfrac{A-B}{2}=B.
\end{cases}
コロリー「連立方程式に代入したんだね。なるほどねぇw」
第2章「運命の赤い関数」
コロリー「で、これがどうかしたの?w」
マスマス「突然だけど、コロリーは『運命の赤い糸』って知ってる?」
コロリー「え、知ってるよw 人は運命の人と見えない糸で結ばれてるという言い伝えでしょ?見えないのに赤いんだよねw 赤外線かなw」
マスマス「でね、今日は足してA、引いてBを使って、『運命の赤い糸』を作るよ!」
コロリー「えぇっ!そんなことできるの?」
マスマス「『運命の赤い関数』と言ったほうが正確かな。要するに、こんな関数のことだよ」
コロリー「うぉう、ハートができてる!すごいよマスマスさん!」
マスマス「よし、コロリーも一緒に作ろう!」
コロリー「やったぁーw」
マスマス「まずはハートの上の部分の関数を作ろう。」
マスマス「コロリーは何に見える?」
コロリー「ん~、円がふたつかなぁ~」
マスマス「いいねぇ!じゃあ円を考えよっか。円の方程式はで表せたね。これをについて解くと
\begin{equation}
y=\pm\sqrt{r^2-x^2}
\end{equation}となるよ」
コロリー「ふむ。を移項して、ルートをとったんだね」
マスマス「そうそう。で、今は円の上側の式が欲しいからプラスの方を選ぼう。半径はとしておくと\begin{equation}y=\sqrt{1-x^2}\end{equation}という式になるね。グラフにするとこうなるよ」
コロリー「ふむふむ」
マスマス「そして、軸方向に1だけ平行移動させるよ。これはの部分をに書き換えればいいんだ。すると、
\begin{equation}
y=\sqrt{1-(x-1)^2}
\end{equation}という式になるね」
コロリー「ん~なるほどぉ。じゃあもう一つの円は軸方向にだけ平行移動させればいいんだぁね。ということは
\begin{equation}
y=\sqrt{1-(x+1)^2}
\end{equation}がもう一つの円の方程式だね?マスマスさん!」
マスマス「うん!それでもいいけど、
\begin{equation}
y=\sqrt{1-(|x|-1)^2}
\end{equation}と書くだけで円を2つとも表せるんだ」
コロリー「えぇ?本当かなぁ?」
マスマス「場合分けして考えてみよっか。のときは絶対値はそのまま外れて
\begin{equation}
y=\sqrt{1-(x-1)^2}
\end{equation}という式になるよね。のとき、絶対値を外すときはマイナスが付くけど、
\begin{eqnarray*}
y&=&\sqrt{1-(-x-1)^2}\\
&=&\sqrt{1-(x+1)^2}
\end{eqnarray*}となるよ」
コロリー「わ!?僕の作った式とおんなじだぁ!」
マスマス「ということで、ハートの上の部分ができたね。と名付けておこう」
マスマス「次はハートの下の部分を考えよう」
コロリー「うーん。難しいなあ」
マスマス「難しかったら別のにするかい?例えば、こんなハートもかわいいと思うよ」
コロリー「おお!これならできそうw えっと、この場合は、半径2の円がいいのかな?」
マスマス「うんうん」
コロリー「半径2の円の方程式はだから、
\begin{equation}y=\pm\sqrt{4-x^2}\end{equation}となって、今は円の下側を使いたいから\begin{equation}y=-\sqrt{4-x^2}\end{equation}かな?」
マスマス「うん。合っているよ!じゃあこの関数をと名付けようか」
コロリー「でも、これを作ってこのあとどうするの?『運命の赤い糸』ホントに作れるの?」
マスマス「ここで足してA、引いてBが活躍するんだ!コロリーにちょっと質問するけど、
\begin{equation}\dfrac{a(x)+b(x)}{2}+\dfrac{a(x)-b(x)}{2}\end{equation}は何になるかわかるかい?」
コロリー「ええと、このまま足せばいいのかな?
\begin{align*}
\dfrac{a(x)+b(x)}{2}+\dfrac{a(x)-b(x)}{2} &=\dfrac{a(x)+b(x)+a(x)-b(x)}{2}\\
&=\dfrac{2a(x)}{2}\\
&=a(x)\end{align*}
マスマス「そうだね。これは、足してA、引いてBの『足してA』の部分なんだ。、として書き換えたものを書くとこうなるよ」
\dfrac{a(x)+b(x)}{2}+\dfrac{a(x)-b(x)}{2}=a(x)\\
\dfrac{a(x)+b(x)}{2}-\dfrac{a(x)-b(x)}{2}=b(x)
\end{cases}
コロリー「ここで足してA、引いてBを使うんだぁね」
マスマス「最後に、もうひと工夫をするよ。
\begin{equation}
F(x)=\dfrac{a(x)+b(x)}{2}+c(x)\cdot\frac{a(x)-b(x)}{2}
\end{equation}という関数を考えよう。ここで、もしだったら『足してA』の形に、だったら『引いてB』の形になるのは分かるかい?
コロリー「えっと…うん、確かに!」
マスマス「コロリー、最後の質問!『1になったり、-1になったりする関数』って思いつく?」
コロリー「『1になったり、-1になったりする関数』かぁ…。あっ!分かった!だね!」
マスマス「そう!その通り!もちろんでもOKだよ。ということで、『運命の赤い関数』の完成!」
\begin{equation}
F(x)=\dfrac{a(x)+b(x)}{2}+\sin x\cdot\dfrac{a(x)-b(x)}{2}
\end{equation}
コロリー「マスマスさん!早くグラフをみせてよ!」
マスマス「数式を書いてるからちょっと待っててね…はい!できました!」
コロリー「な、なにこれぇ!?マスマスさんの嘘つき!全然ハートになんかなってないじゃないか!」
マスマス「あっはは、ごめんごめん。の周期をもっと短くしないと駄目だったね。の中身をくらいに書き換えてっと」
\begin{equation}
F(x)=\dfrac{a(x)+b(x)}{2}+\sin50x\cdot\dfrac{a(x)-b(x)}{2}
\end{equation}
コロリー「うわw すごい!ハートになってるw」
マスマス「でしょ?ちなみに、僕がさっき作ったハートの関数の下側は
\begin{equation}b(x)=\sin^{-1}(|x|-1)-\dfrac{\pi}{2}\end{equation}として作ったんだ。はのことじゃなくて、の逆関数のことだよ」
コロリー「ふーん。よくわかんないからまた今度教えてw このハート、コロネに見せてくるw じゃあね!マスマスさん!」
マスマス「えっちょまっ!…ああ、行っちゃった。本当はこっちを見せたかったんだけどなあ」
マスマス「の代わりに、を使った『運命の赤い関数』。と別途で定義してあげれば*1、『弧状連結ではない連結な関数』になる。連続にはなれない。でも連結にならなれる。計算してないけど、糸の距離も無限だろう。ああ…こんなにも愛しくて切ない関数…君に出会えてよかった…!」
マスマス「おっと失礼。そろそろお別れの時間だね。それではこの次も~?
つくってマスマス!
バイバ~イ!」
次回予告
『つくってマスマス』、次回作はあるんですかねぇ…?
対話形式とは限りませんが、近日、「足してA、引いてB」の後編をお送りします。目標は一週間後!
thank Q for rEaDing.φ(・▽・ )
*1:ハートの中心部分の「0から-3」の間であればなんでも大丈夫です。