Corollaryは必然に。

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【お祭り気分】数学夏祭り問1の解説と作問者の気持ち

今日から2週間、こんな祭りが開催されているみたいです。
mathmatsuri.org


毎日17時に数学の問題が出る数学夏祭りらしいです。ワッショ~イ

公式サイトを見る限り、投稿される問題を自由に楽しんでいいっぽいですね。

具体的に言うと、電卓などは使用OKらしいし、私みたいに解説記事なんかを書いて参加してもいいみたいです。

どう楽しんでもよいということらしいので、「お祭り気分で楽しんで解説」をコンセプトにブログを書こうかなと思います。お祭り気分とはいえ、正しい証明を与えることに変わりありません。ただ、口語的表現が多めで気楽に書いているだけです。

解けなかった場合は「解答までの私のアプローチの記録」として残しておこうかなと思います。

あと、今回は初回ということもあって、気合入れて作問者の気持ちも考察してみました。

問題文をみた私の感想

それでは記念すべき最初の問1を見てみましょう。ワッショ~イ

ふむふむ、整数問題ですね。

指定された「qrを掛けた数を答えよ」というおまけがあるけど、これは何だろ?「私はロボットではありません」的なやつ?意図がよく分からないけど、解の組を全部求めればすぐ分かるから別にいっか。

ていうか、qは後ろから5つ数えられるのか。ということは、少なくとも解の組が5つ以上あるっぽいな(やな感じ)。

いや待てよ。前から3つ数えるrと、後ろから5つ数えるqで前後が入れ替わるのは少し気持ち悪いので、解の組が8つ以上ある可能性はありえるな(ぴえん)。

あと、\dfrac{r}{79}ね。なんやこの79。この79が難易度を上げている原因であることは間違いないな。



感想はこれくらいにして、実際に解いてみますか。


解説(お祭り気分で)

事前考察

お祭りなので、とりあえず整数を放り込んで証明の方針を考えましょうか。適当にpqを放り込んでみます。ワッショ~イ
\begin{align*}
\frac{1}{2} + \frac{1}{3} &= \frac{5}{6}\\
\frac{1}{7} + \frac{1}{9} &= \frac{16}{63}\\
\frac{1}{2} + \frac{1}{79} &= \frac{81}{158}
\end{align*}だ…だめだ、分母が全然79にならねえ(絶望)。この方針ではきついっすね(知ってた)。

でも、代入してみて気づくこともあったりもする。そもそも79は素数なので、
pqは少なくとも一方は79の倍数じゃないと、通分しても分母に79が出てこない」んですよね。冷静に考えたら、
\begin{align*}
\frac{1}{79} + \frac{1}{79} &= \frac{2}{79}\\
\frac{1}{158} + \frac{1}{158} &= \frac{1}{79}
\end{align*}という2組の解が求まるわけですし。この調子でじゃんじゃん解を量産できればいいんですけど、79の倍数を考えるのは面倒なのでやめておこう。

解答(お祭り気分)

事前考察より、通分すると何か手がかりが得られそうなので、通分してみようかと思います。d=\gcd(p,q)p=dp'q=dq'p'q'は互いに素)とおいて通分すると
\begin{equation*}
\frac{1}{p} + \frac{1}{q} = \frac{p'+q'}{dp'q'} =\frac{r}{79}
\end{equation*}ですね。よって
\begin{equation}
79(p'+q')=dp'q'r\label{1}
\end{equation}となります。

ここからは間違えやすいので慎重に考えます。79は素数なので,d,p',q',rのうち少なくとも1つは79を因数にもちます。「少なくとも1つ」なので、まだまだパターンが多いのでもう少し絞れるか考えます。すると、p'q'は互いに素なのでp'p'+q'も互いに素であり,q'p'+q'も互いに素です。

補足 一般に\gcd(a,b)=\gcd(a\pm kb,b)が成り立ちます。この公式はユークリッドの互除法の証明に使える割と便利な公式です。この公式において,特に\gcd(a,b)=1ならば\gcd(a+b,b)=1\gcd(a,a+b)=1となります。

よってp'q'は79の約数であることが分かります(事前考察と似たような結果!)

さらにp\le qなのでp'\le q'であり,p'q'は互いに素なので
\begin{equation*}
(p', q')=(1,1),\;(1,79)
\end{equation*}まで絞れますね。お、解けそう!

Case1:(p', q')=(1,1)のとき

\eqref{1}より
\begin{equation*}
79\cdot2=dr
\end{equation*}となるのでr< 79に気を付けると
\begin{equation*}
\begin{pmatrix}
d\\
r
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
79\\
2
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
158\\
1
\end{pmatrix}
\end{equation*}となるわけですね。ということは
\begin{equation*}
\begin{pmatrix}
p\\
q\\
r
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
79\\
79\\
2
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
158\\
158\\
1
\end{pmatrix}
\end{equation*}という解が得られました。事前考察でたまたま見つかったやつがズバリ出てきましたね。



Case2:(p', q')=(1,79)のとき

\eqref{1}より
\begin{equation*}
80=dr
\end{equation*}となりますね(79を約分した)。

え?掛けて80?これは解が多いぞ。でもやるしかないっすね。やはりr< 79に気を付けてdrの組を求めると

\begin{align*}
\begin{pmatrix}
d\\
r
\end{pmatrix}= &
\begin{pmatrix}
2\\
40
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
4\\
20
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
5\\
16
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
8\\
10
\end{pmatrix}, \\
&\begin{pmatrix}
10\\
8
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
16\\
5
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
20\\
4
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
40\\
2
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
80\\
1
\end{pmatrix}.
\end{align*}

ということで

\begin{align*}
\begin{pmatrix}
p\\
q\\
r
\end{pmatrix}= &
\begin{pmatrix}
2\\
158\\
40
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
4\\
316\\
20
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
5\\
395\\
16
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
8\\
632\\
10
\end{pmatrix}, \\
&\begin{pmatrix}
10\\
790\\
8
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
16\\
1264\\
5
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
20\\
1580\\
4
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
40\\
3160\\
2
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
80\\
6320\\
1
\end{pmatrix}
\end{align*}

が求まりました(地味に80の約数に79をかける作業が大変)。



以上より、Case1とCase2を合わせて答えが出揃いました!

\begin{align*}
\begin{pmatrix}
p\\
q\\
r
\end{pmatrix}= &
\begin{pmatrix}
2\\
158\\
40
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
4\\
316\\
20
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
5\\
395\\
16
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
8\\
632\\
10
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
10\\
790\\
8
\end{pmatrix}, \\
&\begin{pmatrix}
16\\
1264\\
5
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
20\\
1580\\
4
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
40\\
3160\\
2
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
79\\
79\\
2
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
80\\
6320\\
1
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
158\\
158\\
1
\end{pmatrix}
\end{align*}

念のため\begin{pmatrix} 
p\\
q\\ 
r 
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix} 
16\\
1264\\
5
\end{pmatrix}, 
\begin{pmatrix} 
20\\ 
1580\\
4
\end{pmatrix}が本当に解になっているのかチェックします。1264=16\cdot791580=20\cdot79なので
\begin{align*}
\frac{1}{16}+\frac{1}{1264}&=\frac{79+1}{16\cdot79}\\
&=\frac{80}{16\cdot79}\\
&=\frac{5}{79},\\
\frac{1}{20}+\frac{1}{1580}&=\frac{79+1}{20\cdot79}\\
&=\frac{80}{20\cdot79}\\
&=\frac{4}{79}.
\end{align*}うん、大丈夫そうですね。



あ、問題はまだでした。pについて小さい順にならべたとき、前から3番目のr16で、後ろから5番目のq1580なので、求める値はこれですね!?

\begin{equation*}
q r=25280\end{equation*}



ふう。解けた~。


作問者の気持ち考察(なぜ79を選んだのか)

ところで、どんな問題にも必ず作問者がいます。その人が「なぜこの問題を作ったのか」について考えてみようと思います。特に、「なぜ79という数を選んだのか」についてが最も気になる所なので、ここに焦点をあてて考察します。

79は素数であり、私の解答は\eqref{1}以降から79は素数であることを本質的に利用しています。おそらく問題作成者も79は素数であることを利用した解答を想定していると思います。

そこで79以外の素数ではどうなるか考察してみます。79の代わりに素数Pにしたものを考えます。
\begin{equation*}
\frac{1}{p} + \frac{1}{q} = \frac{r}{P}\quad(p\leq q,\;\;r< P).
\end{equation*}このときd=\gcd(p,q)p=dp'q=dq'p'q'は互いに素)とおくと
\begin{equation*}
P(p'+q') = dp'q'r
\end{equation*}となります。やはりp'p'+q'は互いに素であり,q'p'+q'も互いに素なので,p'q'Pの約数です。よって
\begin{equation*}
(p',q')=(1,1),\;(1,P)
\end{equation*}となります。(p',q')=(1,1)のときは
\begin{equation*}
2P = dr
\end{equation*}となり、これ以降もスムーズに求まります。一方(p',q')=(1,P)のときは
\begin{equation*}
P+1 = dr
\end{equation*}となります。ここで、P+1約数の個数が多ければ多いほど解が多くなります。しかし、解が多すぎると「良い問題」とは言えないでしょう。元の問題ではP+1=80で、約数は10個あります。これくらいの個数であれば許容範囲かもしれません。そこで「P+1約数の個数が8~12個となるような2桁素数P」を調べてみます(3桁以上にするとより面倒な計算が増えそうなので除外)。

P+1の約数の個数が…

  • 8個となる2桁の素数P:23,29,41,53
  • 9個となる2桁の素数P:なし*1
  • 10個となる2桁の素数P:47,79
  • 11個となる2桁の素数P:なし*2
  • 12個となる2桁の素数P:59,71,83,89


ん~なるほど、79を選んだ理由が何となく分かった気がします。

P+1の約数を求めるとき,P+1自身が九九の答えになるときは約数を少し簡単に求められます。

例えばP+1=24の場合、24=2\cdot12は九九に出てこないですが3\cdot8は九九に出てくるのですぐに計算できます。

つまり、計算ミスを誘発させるような問題を作りたければ、P+1自身が九九の答えにならない数を選ぶとよさそうです。

求めた数の候補のうち,P+1が九九の答えにならない素数P
\begin{equation*}
P=79,\;59,\;83,\;89
\end{equation*}に絞られます。この中で最小の数はP=59なのですが、P+1=601から6までの数で割り切れるという性質をもつため、60の約数を求めることが比較的簡単なのです。

そういうわけで、59の次に小さい79を選んだのではないか、と私は考えました。言われてみれば80って絶妙ですよね。「九九81」より1小さいだけなのに、80を2つの自然数の積に表すとどちらか一方は2桁になってしまうので。


まとめ

もうすでにたくさんの解答が寄せられていますが、問題そのものまで考察したものはまだないんじゃないかなと思います(アピールポイント)。ところで、解答提出は25:00〆切らしいのですが、解説の応募については明示されていない気がします。解説の応募が解答提出と同じ〆切の場合はこの記事は完全に時間切れなのですが、解説入賞者は9/7(月)15:00 に前半5問の入賞者が発表されるらしいので、ワンチャンに賭けて寄稿します!

追記(2020年9月5日) 数学夏祭り広報担当のヨビノリたくみさんの動画(全国の数学強者集まれ!【数学夏祭り】の1:46以降)によると、解説は特に時間の指定も制限もないそうです。よかった!


thank Q for rEaDing.φ(・▽・ )



数学夏祭りの問2の解説はコチラ
corollary2525.hatenablog.com

*1:約数の個数が9個である2桁の数は36のみだが、35は素数でない

*2:約数の個数が11個である最小の数は1024