Corollaryは必然に。

このブログは「コロちゃんぬ」の提供でお送りします

掛谷問題 ~線分を回せる面積最小の図形を求めて~

この記事は、日曜数学Advent Calender 2016の22日目の記事です。
21日目の記事はみずすまし(nosiika)さんの「正方形+正方形=正方形の話」です。
中学生のときに見つけたピタゴラス数(3,4,5)(5,12,13)(7,24,25)(9,40,41)…にあんな性質があったなんて…!

イントロダクション

今回、私が紹介するのは「掛谷かけや問題」についてです*1

掛谷問題(1916)
長さ1の線分を領域内で1回転させることのできる図形のうち、面積が最小の図形は何か?
長さ1の線分を、領域内で1回転できる図形

この問題、知らない方はちょっと考えてみてください。

名前にあるとおり、日本の数学者、掛谷宗一(1886 - 1947)が1916年の11月にこの問題を考え([2]より)、1917年に提出した問題です。そして、2016年12月にこの事実を知った私はこう思ったのです。

うおお!100周年だぁ!!

書きたいなぁと思った問題が100周年だなんて、こんな偶然あるんですね。掛谷問題に関する解説は解析・応用解析オープンレクチャーズ 企画・制作 新井仁之をはじめとする多くの記事がありますが、(勝手に)100周年記念を祝いたいので、他のサイトでは見れないほどのGIF動画盛りだくさんで解説していきます!記事の後半では「ルベーグ測度」「\varepsilon-\delta論法による表現」「ハウスドルフ次元」などといった少々難しい言葉が出てきますが、適当に読み飛ばして画像だけでも見て楽しんで頂けたらと思います。




いろんな図形を考えてみる

この問題をみて最初に思いつく図形は「直径1の円」ですね。

直径1の円は、領域内で長さ1の線分を回転できる様子を表した図
この面積は
\begin{equation*}
\dfrac{\pi}{4}\approx 0.7854
\end{equation*}です(半径1/2だからね)。これが最小のような気もしますが、もっと効率のいい回転を考えればさらに小さくできそうな気もします。


ここで、掛谷先生が閃きます。「ルーローの三角形」が面積最小ではないか?と。

ルーローの三角形(正三角形の各辺を膨らませたような図形)は、領域内で長さ1の線分を回転できる様子を表した図
この面積を求めると
\begin{equation*}
\dfrac{\pi-\sqrt{3}}{2} \approx 0.7048
\end{equation*}であり、直径1の円の面積よりも小さくなりました。


しかし、掛谷先生の同僚の藤原松三郎(1881 - 1946)と窪田忠彦(1885 - 1952)が、より面積が小さい図形があることを指摘します。それは「高さ1の正三角形」です。

高さ1の正三角形は、領域内で長さ1の線分を回転できる様子を表した図
この面積は
\begin{equation*}
\dfrac{1}{\sqrt{3}} \approx 0.5774
\end{equation*}
であり、確かに小さいです。ここまでが1916年11月の話のようです。そして、その5年後の1921年ハンガリーの数学者J. Pál(1881 – 1946)が「凸集合*2に限れば、高さ1の正三角形が面積最小である」ことを証明しました。

これでひとまず解決したのですが、凸という条件を外したとき、もっと面積を小さくできるのか?という疑問も出てきますね。実はできるんです。窪田先生が「デルトイド」という内サイクロイドの内部領域でも線分を一回転できることを発見しました。

デルトイドは、領域内で長さ1の線分を回転できる様子を表した図
気持ちいい~

面積の求め方は割愛しますが、面積は
\begin{equation*}
\dfrac{\pi}{8} \approx 0.3853
\end{equation*}
です。ついに直径1の円の面積\frac{\pi}{4}の半分まで小さくなっちゃいました。


これが最小なのでしょうか。いや、もしかしたらもっと面積を小さくできるかもしれない・・・!そう思ったコロちゃんぬ(1990 -)が100年の時を経て挑戦します。

半径Rの円周上に線分の両端を合わせながら、線分を走らせたときにできる図形。半径Rを大きくすると図形が細くなり、面積が小さく見える。

長さ1の線分の端点を半径Rの円周上に置いて走らせたときの図形を考えます。そしてR\to\inftyとすれば面積がいくらでも小さくなるだろうと思いました。早速面積を求めます。

半径Rの円周上に線分の両端を合わせながら、線分を走らせたときにできる図形の面積を求めるための図
穴の半径を rとすると、 r=\sqrt{R^2-\left(\frac{1}{2}\right)^2}=\sqrt{R^2-\frac{1}{4}}なので、求める面積は
\begin{align*}
\pi R^2 - \pi r^2 &= \pi R^2 - \pi\left(R^2-\frac{1}{4}\right)\\
&= \dfrac{\pi}{4}.
\end{align*}( ´・ω・`)・・・あれ??Rが消えちゃった。

どんなにビヨンビヨン伸ばしても面積変わらないのね。これはこれで面白い結果(今考えると当たり前)ですが、「直径1の円」と同じ面積なので振り出しに戻ってしまいました。少し落ち込んだので、ここまでに紹介した図形を鑑賞して、心を癒すことにします。

領域内で線分を一回転できる図形たち

なんか、洗濯機の中を無心で眺めている気分。あれ好きなんです。


なお、これらの図形はこちらのリンクでも遊べます。
Kakeya problem | Desmos
ドラッグして動かすこともできますので、重ねて面積を比較してみてください。

ベシコヴィッチによる結果

一方その頃、ロシアの数学者A. S. Besicovitch(ベシコヴィッチ, 1891 – 1970)は掛谷問題とは無関係に次の定理を証明しました。

定理1(Besicovitch, 1919)
m_2を2次元ルベーグ測度とする. m_2(K)=0かつ任意の角度の長さ1の線分を含むようなK\subset\mathbb{R}^2が存在する.
(このような集合KBesicovitch集合 (掛谷集合)という)

用語をざっくり説明します。「2次元ルベーグ測度」というのは2次元空間\mathbb{R}^2内の集合の「面積」を測る関数のことです*3。つまり、\[m_2(K)=「図形Kの面積」\]を表します。これで定理が読めるようになったと思います。つまり、Besicovitchは任意の角度の長さ1の線分を含んでいながら、面積ゼロの集合を構成したのです!マジかよ!直感に反しすぎ!

ただ、注意してほしいのは「連続的に1回転できる」とは言っていないので、Besicovitch集合が掛谷問題の解にはなっていません。ですが、ちょっと工夫することで掛谷問題が解決できることを後にBesicovitchが証明しました。

定理2(Besicovitch, 1928)
m_2を2次元ルベーグ測度とする. 任意の\varepsilon>0に対して, あるK\subset\mathbb{R}^2が存在し, m_2(K)<\varepsilonかつK内で長さ1の線分を連続的に1回転できる.

要するに、Besicovitchは長さ1の線分を連続的に1回転できる図形の面積は、(0にはできないが)いくらでも小さく作れることを証明したのです!マジかよ!

長さ1の線分を1回転できて面積ほぼ0の図形・・・一体どんな図形なのか気になりますよね。それではご覧ください!こちらです!










長さ1の線分を1回転できて面積ほぼ0の図形

( ´・ω・`)・・・??
「ちょっと意味がわからない・・・」「一体どうやって回すんだ・・・?」という反応がほとんどだと思います。この図形は「ベシコヴィッチモンスター」と呼ばれる部分と「モンスターの爪」という部分でできていますので順番に説明しますね。


ベシコヴィッチモンスター

ベシコヴィッチモンスター(ペロンの木とも言われます)は、定理1および定理2の証明に使う図形であり、先ほどの図のこの部分です。

ベシコヴィッチモンスター
上部の針のような部分を「腕」とみなせば、たしかにモンスターですね。この図形は 60^{\circ}までの任意の角度の長さ1の線分を含んでいますが、連続的に動かせない所があります。
ベシコヴィッチモンスターには、60°までの任意の角度の、長さ1の線分を含んでいることを検証した図

ベシコヴィッチモンスターは、高さ1の正三角形ABCから作ることができます。まず、底辺を2^n等分に分割します。とりあえず、2^3=8等分で考えます。(画像は[5]より引用・編集)

ベシコヴィッチモンスターの作り方

\dfrac{1}{2}<\alpha<1として、左から偶数番目を(1-\alpha)\cdot\dfrac{{\rm AB}}{2^n}だけ平行移動します。すると2^{n-1}個(図では4個)の図形ができます。

次も同じように左から偶数番目の図形を平行移動します。今度は2^{n-2}個(図では2個)の図形ができます。

これを繰り返して1個の図形になるまで繰り返します。

この図形は三角形を次々と重ねて構成されているので、直感的に面積が小さくなっていることが分かります。直感的説明では許せない方のために一応書きますが、この操作によってできた図形を\Psi_n(\triangle{\rm ABC})とおくと、
\begin{align*}
m_2(\Psi_n(\triangle{\rm ABC})) &\le\left(\alpha^{2n}+2(1-\alpha)^2\sum_{k=0}^{n-1}\alpha^{2k}\right)m_2(\triangle{\rm ABC})\\
&\le\left(\alpha^{2n}+2(1-\alpha)^2\sum_{k=0}^{\infty}\alpha^{2k}\right)m_2(\triangle{\rm ABC})\\
&=\dfrac{1}{\sqrt{3}}\left(\alpha^{2n}+2(1-\alpha)^2\frac{1}{1-\alpha^2}\right)\\
&=\dfrac{1}{\sqrt{3}}\left(\alpha^{2n}+\frac{2(1-\alpha)}{1+\alpha}\right)\\
&<\dfrac{1}{\sqrt{3}}\left(\alpha^{2n}+2(1-\alpha)\right)
\end{align*}という不等式が得られます(一行目の不等式がポイントなのですが、\alpha^{2n}m_2(\triangle{\rm ABC})は土台の正三角形の面積を表し、\sumの部分はモンスターの腕の面積を上手く評価しています)。よって非常に1に近い\dfrac{1}{2}<\alpha<1をとり、死ぬほど大きい自然数nを選ぶことでm_2(\Psi_n(\triangle{\rm ABC}))を小さくできることが分かります。詳しい解説は、新井仁[3]の13章を参照してください。また、ミュンヘン大学(LMU)の卒論と思われる文献(英語)ですが
http://www.mathematik.uni-muenchen.de/~lerdos/Stud/furtner.pdf
の1. Kakeya setsのセクションで読むこともできます。

追記(2020年7月29日) 上記のミュンヘン大学の文献のリンクは切れてしまいました。代わりになるPDFが見つかったら掲載したいと思います。
また、新井仁[3]アニメーション集の中のペロンの木 2 (Perron tree)で、分割をより細かくしたベシコヴィッチモンスターを見ることができます。


モンスターの爪(仮の名)

この部分には特に名前が無かったので「モンスターの爪」と私が今名付けました*4。この図形は、長さ1の線分を、いくらでも小さい面積で、連続的に平行移動させることができます。

例えば、下図の線分をオレンジの地点に移動させたいとしましょう。

互いに平行な2直線の図。片方の直線には長さ1の線分が重なっていて、もう一方の直線に長さ1のゴール地点がある。

素直に平行移動させると、長方形になりますが、いくらでも小さい面積でいけます。思いつくでしょうか?

正解はこちら。









~モンスターの爪~

長さ1の線分を、いくらでも小さい面積で、平行な直線の間を移動できることを表した図。まずは長さ1の線分を、端点を中心に少しだけ傾ける。次に、移動したい直線にぶつかるまで、線分を直進させる。ぶつかったら傾けた分を元に戻し、ゴール地点まで移動する
これ、上手い方法ですよね。線分には幅が無いので、線分の方向にどれだけ進んでも面積はゼロです。そして、この角度を限りなく小さくすればいくらでも面積を小さくできるわけです。

線分を回してみよう

もう一度あの図形を見直してみましょう。
長さ1の線分を1回転できて面積ほぼ0の図形(再掲)
この図形はまず、めちゃくちゃ細かく分割して作った「ベシコヴィッチモンスター」を3つ用意して、60^{\circ}ずつ回転させたものを合体させます。これは180^{\circ}回転分の任意の角度を含んでいますが、ところどころ連続的に動かせません。そこで、「モンスターの爪」を生やすと平行線が生まれるので、これを角度を小さくしてつなげます(見やすいように平行線をつなげる線を点線で表しました)。厳密には扇形の部分も図に示すべきなのですが、心の目で見てください。

これが線分が回転できるカラクリとなっています。

では、実際にこの図形のなかで線分を回してみましょう。複雑すぎてGIFアニメーションは作れなかったので、代わりにこちらの動画をご覧ください。
Mathologer, The Kakeya needle problem (the squeegee approach)
(9:46ごろから12:00ごろまで)

いや~アメイジングだね。


定理2を厳密に証明

念のため、「ベシコヴィッチモンスター」と「モンスターの爪」を用いることで、定理2を厳密に証明します。\varepsilon-\delta論法を習いたての大学生などには丁度いい指の運動になるのではないかと思います。

定理2(Besicovitch, 1928)
m_2を2次元ルベーグ測度とする. 任意の\varepsilon>0に対して, あるK\subset\mathbb{R}^2が存在し, m_2(K)<\varepsilonかつK内で長さ1の線分を連続的に1回転できる.

証明 任意に\varepsilon>0をとる.このとき,十分1に近い\alpha<1と十分大きいn\in\mathbb{N}をとることでベシコヴィッチモンスターの面積を\dfrac{\varepsilon}{6}未満にできる.この図形を60^{\circ}および120^{\circ}回転したものの合併を取ると,その面積は\dfrac{\varepsilon}{2}未満である.この3つベシコヴィッチモンスターの腕の2辺を延長すると,3\cdot 2^n組の平行線ができるので,その個数だけモンスターの爪を作れる.このとき,十分小さい角度\theta>0をとることで,爪の面積の総和を\dfrac{\varepsilon}{2}未満にできる.このようにしてできた図形をKとおくと,
\begin{equation*}
m_2(K)<\dfrac{\varepsilon}{2}+\dfrac{\varepsilon}{2}=\varepsilon
\end{equation*}
であり,これが求める集合である.■


掛谷問題のその後

驚きの結果で掛谷問題は解決されました。しかし、Besicovitchの考えた図形は面積を小さくしようとすればするほど、平行線の部分が長くなり、無駄に場所をとる図形になってしまいます。「もっと狭い領域内で作れないか?」「単連結*5のときはデルトイドが面積最小なのか?」という疑問も出てきます。この疑問については次のF. Cunningham[4]の結果が面白いです。

定理3(Cunningham, 1971)
m_2を2次元ルベーグ測度とする. 任意の\varepsilon>0に対して, 半径1の円に含まれるようなある単連結K\subset\mathbb{R}^2が存在し, m_2(K)<\frac{\pi}{108}+\varepsilonかつ任意の角度の長さ1の線分を含む.

単連結のときは今のところ
\begin{equation*}
\dfrac{\pi}{108}\approx 0.02908
\end{equation*}の近くまで小さくでき、しかも半径1の円に収められるようですね。オープンアクセスだったので論文をざっくり読んでみましたが、こんな感じの図形を考えるそうです。

半径1の円に収まるような、奇数個の突点をもつ星形の図形
奇数個の突点をもつStar-shaped(星形)の図形を考えて、突点の数を増やせば面積を減らせるようです。線分を一回転できることは皆さまの思考実験でご確認ください。


また、定理1のような性質をもつ集合は次元に関して一般化して定義できます。

定義(d次元掛谷集合)
m_dをd次元ルベーグ測度とする. 有界閉集合K\subset\mathbb{R}^dd次元掛谷集合d次元Besicovitch集合)であるとは,
m_d(K)=0かつ任意の方向の長さ1の線分を含むことである.

このd次元掛谷集合に関しては、今でも未解決なことばかりです。例えば、次の未解決問題は興味深いです。

掛谷予想*6
d次元掛谷集合のハウスドルフ次元はdであろう.

「次元」と聞くと、線は1次元、平面は2次元、立体は3次元のようなイメージをすると思います。複雑な図形を考えると、平面よりは厚みがあるけれど、立体ほどではない、言わば「2.5次元」と言いたくなるような図形が現れることがあります(フラクタル幾何という分野では特に)。「ハウスドルフ次元」はそのような図形に対してしっかり意味を与える概念だと思ってください(厳密な定義は毎度おなじみWikipediaでHausdorff dimension - Wikipedia)。

定理1で構成する(2次元)Besicovitch集合も複雑ですが、ハウスドルフ次元は2であることが分かっています(Roy O. Davies, 1971)。しかし、3次元以上になると途端に難しくなってしまうのです。なお掛谷予想は、解析学の多くの未解決問題と関連していること(「未解決の○○が証明できれば、掛谷予想は正しい」という主張)がJ. BourgainやT. Tao*7らによって証明されています。


まとめ

一番最初に考えた掛谷問題に戻り、その解答を条件別にまとめましょう。

図形の条件 結果
凸集合 高さ1の正三角形(面積は\frac{1}{\sqrt{3}}
単連結 任意の\varepsilon>0に対して, \frac{\pi}{108}+\varepsilonよりも面積を小さくできる.
一般の集合 任意の\varepsilon>0よりも面積を小さくできる.

単連結の場合だけ部分的な解答です。単連結の場合もいくらでも面積を小さくできるという文言がどこかのサイトに書いてあったのですが、真偽は不明です。分かったら後で追記します。

おまけ

掛谷問題の着想に至った経緯に関する面白いエピソードがあります。

矢野健太郎「ゆかいな数学者たち」によると、矢野先生がこの問題の着想について尋ねたところ、

「武士たるもの、常に刀を帯びるものであり、便所に入る時でさえ刀を帯びていた。便所で応戦することになったとき、刀を振り回せるような便所の最低限の広さとは何か、ということから思いついた。」

と答えたそうです*8



武士の皆様および掛谷先生、こちらの物件なんかはいかがでしょうか?

トイレの個室を、掛谷問題で考えた図形に当てはめた間取り図





日曜数学Advent Calender 2016、明日(23日目)はHaru Negamiさんの
「キラキラ輝くクリスマスにぴったりの、オーバーワークの数学の話
です。題名ですでに面白いからずるい。

あ、そういえばもうすぐクリスマス。ブログにもクリスマス感あふれる画像を貼っておきましょうか。



ベシコヴィッチモンスターをクリスマスツリーとみなし、円・ルーローの三角形・正三角形・デルトイドなどをツリーの飾りになっている画像


長文にお付き合いいただきありがとうございました。


thank Q for rEaDing.φ(・▽・ )




参考文献

[1] 新井仁之, 掛谷問題と実解析, 2002.(閲覧日: 2016年12月21日)


[2] 新井仁之, 解析・応用解析オープンレクチャーズ 企画・制作 新井仁之, 2009.(閲覧日: 2016年12月21日)

代数学入門講座 Vol.1 の記事のWEB版です。私の記事の存在意義が無くなってしまうくらい読みやすい記事です。


[3] 新井仁之, ルベーグ積分講義 ルベーグ積分と面積0の不思議な図形たち, 日本評論社, 2003.

非常に参考にさせてもらったのがこちらの本。定理1および定理2の証明や掛谷予想(d次元掛谷集合のハウスドルフ次元はdである)に関する話が詳しく記述されています。また、(一般の測度空間を扱っていないので少し内容に物足りなさがありますが)ルベーグ積分の入門書としてもよさげ。この本のアニメーションと正誤表も公開されているので理解の助けになると思います。


[4] F. Cunningham, The Kakeya problem for simply connected and for star-shaped sets, The American Mathematical Monthly, 1971.

定理3の証明が載っています。特に“star-shaped(星形)”の場合は少なくとも\frac{\pi}{108}の面積をもつことも証明しています。


[5] Wikipedia, Kakeya set - Wikipedia

*1:後半で触れますが、解析学における未解決問題の方の掛谷問題(掛谷予想)と区別して、「掛谷針問題」とも呼ばれます。

*2:へこんでいない図形のことです。例えば、「●」「■」「▲」は凸ですが、「★」は凸ではないです。

*3:ちなみに、1次元ルベーグ測度は数直線内の集合の「長さ」を、3次元ルベーグ測度は3次元空間の集合の「体積」を測る関数を表します。厳密な定義は「測度論」や「ルベーグ積分論」の本を参照してください。

*4:「モンスターの指」と5分悩みました。

*5:穴の無い図形だと思ってくれればOKです。

*6:この主張のことを「掛谷問題」と呼ぶこともあります。

*7:そういえば今月、 テレンス・タオ ルベーグ積分入門 が出ましたね。

*8:掛谷先生の研究ノートにはそのような記述は無いらしいです([1]より)。実話であってほしいなあ。